硝子軟骨様組織の形質評価
下肢マーカーの発現に基づき、分化誘導した軟骨が下肢軟骨としての特徴を持つかを評価します。
バイオインフォマティクス
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データサイエンス
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組織機能修復学分野
ヒトは直立二足歩行を行う唯一の生物であり、その運動様式に適応するために下肢の骨・関節・軟骨には特徴的な構造が形成されています。 本研究では、発生過程に沿って誘導した硝子軟骨様組織を用いて、直立二足歩行への進化とヒト特異的lncRNAとの関連を解析します。
直立二足歩行の進化については、サバンナ仮説、運搬仮説、体温調節仮説など複数の説明が提案されてきました。
しかし、二足歩行に適応した下肢形態がどのような分子生物学的機序によって成立したのかは、十分に明らかになっていません。
long non-coding RNA(lncRNA)は、mRNAよりも進化的保存性が低く、転写、RNA安定性、翻訳、クロマチン制御など、
セントラルドグマのさまざまな段階に関わることが知られています。
そのため、ヒト特異的lncRNAに着目することで、ヒトの直立二足歩行に関連した下肢・軟骨形成の分子機構に迫れる可能性があります。
本研究の目的は、発生過程に沿って分化誘導させた硝子軟骨様組織において、
直立二足歩行と関連しうるヒト特異的lncRNAを抽出し、その標的遺伝子や機能を予測することです。
とくに、下肢軟骨の形質、細胞外マトリックス(ECM)関連遺伝子、プロモータ領域との三重鎖形成可能性に注目します。
仮説として、ヒトは直立二足歩行によって生じる下肢への負荷に適応するため、 ECMの発現を調節するヒト特異的lncRNAを進化させた可能性があると考えています。
ヒトiPS細胞から発生過程に沿って肢芽間葉系細胞を誘導し、
さらに硝子軟骨様組織へ分化させます。
得られた細胞・組織について、RNA-seq、ATAC-seq、ヒストン修飾情報などのマルチオミクスデータを統合し、
下肢マーカーや軟骨形質の獲得を確認します。
そのうえで、硝子軟骨様組織で特徴的に発現するヒト特異的lncRNAを抽出し、
プロモータ領域との三重鎖形成予測を用いて標的候補遺伝子を推定します。
さらに、標的候補遺伝子とそれ以外の硝子軟骨様組織特異的遺伝子を比較し、Gene Ontology解析によって機能的な特徴を評価します。
下肢マーカーの発現解析から、誘導した軟骨は下肢の軟骨としての特徴を有することが示唆されました。
また、硝子軟骨様組織に特異的に発現するヒト特異的lncRNAを抽出し、その標的候補遺伝子を解析したところ、
ECMに関連する硝子軟骨様組織特異的遺伝子が標的として含まれる可能性が示されました。
さらに、ヒト特異的硝子軟骨様組織特異的lncRNAの標的候補と、それ以外の硝子軟骨様組織特異的遺伝子を比較することで、
標的候補遺伝子群にどのような生物学的機能が偏っているかを評価しました。
この解析により、ヒト特異的lncRNAが硝子軟骨のECM形成や下肢適応に関わる可能性を検討できます。
下肢マーカーの発現に基づき、分化誘導した軟骨が下肢軟骨としての特徴を持つかを評価します。
硝子軟骨様組織で特徴的に発現するヒト特異的lncRNAを抽出し、硝子軟骨形成との関連を解析します。
lncRNAとプロモータ領域との三重鎖形成可能性から、転写制御の標的候補遺伝子を推定します。
標的候補遺伝子群と硝子軟骨様組織特異的遺伝子群を比較し、ECM関連機能の濃縮を評価します。
本研究から、ヒト特異的かつ硝子軟骨様組織特異的に発現するlncRNAは、ECMに関連する硝子軟骨様組織特異的遺伝子を標的とする可能性が示されました。
これは、ヒトが直立二足歩行を実現する過程で生じた下肢への力学的負荷に対し、
ECM発現を調節するlncRNAを進化させた可能性を示す仮説につながります。
今後は、候補lncRNAの発現制御、標的遺伝子との関係、軟骨ECM形成への影響を実験的に検証することで、 ヒト特異的な下肢軟骨形成機構や、軟骨・関節疾患、再生医療への応用可能性を明らかにしていきます。
The Role of Human-Specific lncRNA in Hyaline Cartilage Development
Tatsunori Osone, Tomoka Takao, Takeshi Takarada
bioRxiv, 2026