PRRX1–TOP2A相互作用とMPNST悪性化機構に関する論文が、British Journal of Cancerに掲載されました。
本論文では、悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumour:MPNST)において、転写因子 PRRX1 とDNAトポイソメラーゼ TOP2A の相互作用が腫瘍の悪性化を促進する可能性を明らかにしました。
本研究では、患者検体を用いた免疫組織化学的解析、MPNST細胞株を用いた機能解析、免疫沈降・質量分析による相互作用因子探索に加え、bulk RNA-seq解析およびAlphaFold2/FoldDockを用いたタンパク質複合体構造予測を組み合わせ、PRRX1–TOP2A相互作用の機能的・構造的意義を検討しました。
MPNSTは、末梢神経由来の希少がんであり、再発や遠隔転移を来しやすい難治性腫瘍です。既存治療のみでは十分な治療成績が得られない症例も多く、MPNSTの悪性化機構の解明と、新たな治療標的の探索が重要な課題となっています。
PRRX1は発生や間葉系細胞の制御に関わる転写因子であり、複数のがん種において浸潤・転移・予後との関連が報告されています。本研究では、MPNSTにおけるPRRX1の役割に着目し、その発現、機能、相互作用分子、下流の遺伝子発現変化を多角的に解析しました。
本研究の重要な解析の一つが、bulk RNA-seqを用いたトランスクリプトーム解析です。
PRRX1をノックダウンしたMPNST細胞とコントロール細胞を比較し、PRRX1の発現低下に伴って変動する遺伝子群を同定しました。さらに、GSEAを用いたパスウェイ解析により、PRRX1が細胞増殖や腫瘍悪性化に関連する遺伝子セットの制御に関与することが示されました。
特に、PRRX1ノックダウンにより、MYC targets、E2F targets などの細胞増殖関連遺伝子セットが低下することが確認されました。これは、PRRX1がMPNST細胞の増殖能を支える転写制御ネットワークに関与している可能性を示す結果です。
さらに、PRRX1AとTOP2Aの共発現系を用いたbulk RNA-seq解析では、両者の共発現によって、EMT、mTORC1 signaling、KRAS signaling、SRC signaling など、腫瘍悪性化と関連するパスウェイが活性化することが示されました。
これらの結果から、PRRX1とTOP2Aは単独で機能するだけでなく、両者の相互作用を介して、MPNST細胞の悪性形質を促進する転写プログラムを形成している可能性が示唆されました。
本研究では、PRRX1とTOP2Aの物理的相互作用を検討するために、免疫沈降・質量分析に加え、AlphaFold2およびその拡張手法であるFoldDockを用いたタンパク質複合体構造予測を行いました。
構造予測の結果、PRRX1はTOP2A二量体と相互作用するモデルが得られました。特に、PRRX1のHOMEOBOXドメインと、TOP2AのATPaseドメインとTOPRIMドメインをつなぐリンカー領域が結合に関与する可能性が示されました。
この予測結果をもとに、PRRX1の欠失変異体を用いた免疫沈降実験を行い、PRRX1のHOMEOBOXドメインを含む領域がTOP2Aとの相互作用に重要であることを実験的に検証しました。
このように、AlphaFold2/FoldDockによるin silico構造予測を単なる仮説提示に留めず、実験的検証と組み合わせることで、PRRX1–TOP2A相互作用の分子基盤に迫りました。
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